ゴムの接着加工とは?接着剤接着と加硫接着の違いを徹底解説
2025.06.11

ゴム製品の製造や修理で重要な加工のひとつが「接着加工」です。特にゴム部品同士や他素材との接着では、その強度や耐久性、密閉性が求められます。しかし、接着方法には大きく分けて「接着剤接着」と「加硫接着」があり、それぞれ特性や適用範囲が異なります。
この記事では、ゴムの接着加工における接着剤接着と加硫接着の違いをわかりやすく解説し、それぞれのメリット・デメリットや使用場面について詳しく紹介します。ゴムの接着強度や止水性、密閉性に関する疑問も解消できる内容ですので、製造業者や設計者、メンテナンス担当者の方はぜひ参考にしてください。
1. ゴム接着加工の基礎知識
ゴムは弾性を持つ材料のため、接着面が動いたり変形したりしやすい特徴があります。そのため、単に接着剤を塗布するだけでは強度が不足し、使用環境によっては接着部分が剥がれたり密閉性が失われるリスクがあります。
ゴム接着加工は大きく分けて次の2種類があります。
- 接着剤による接着
- 加硫(かりゅう)接着
2. 接着剤接着とは?一般的で簡易な方法
接着剤接着の概要
接着剤接着は、ゴム系接着剤や瞬間接着剤(シアノアクリレート系など)を使用してゴム表面に接着剤を塗布し、接着面同士を圧着して固める方法です。一般的にゴム製品の補修や簡易な接合に用いられています。

メリット
- 加硫設備や専用金型が不要で、加工費用を抑えられる
- 比較的短時間で接着が完了する
- 小ロットや多品種対応がしやすい
デメリット
- 接着強度が加硫接着に比べて低い
- 接着面の柔軟性が他部分と異なり、剥がれやすい
- 密閉性・止水性が劣るため、水や油分の侵入に弱い
- 長期間の耐久性に課題がある場合が多い
このため、シールやガスケットなどの密閉性能が求められる用途や、耐久性が厳しい環境では単なる接着剤接着は不十分となることがあります。
3. 加硫接着とは?高強度で密閉性も抜群の方法
加硫接着の概要
加硫接着は、生(未加硫)のゴム材を接着部分に使用し、専用の金型の中で加熱圧縮成型(加硫工程)を行うことで、接着部分を一体化させる方法です。ゴムの架橋反応を利用して接着面を強固に結合し、接着部全体を加硫状態にするため、接着部分が他のゴム部分と同じ物性・柔らかさになります。

メリット
- 接着強度が非常に高く、剥がれにくい
- 接着面が一体化し、止水性・密閉性に優れる
- 加硫工程により接着部分の耐久性や耐環境性が向上
- 弾性・柔軟性が均一で、製品全体の品質向上につながる
デメリット
- 加硫用の専用金型が必要で初期費用が高額
- 加硫設備や加工時間が必要なため加工コストが高い
- 加工が複雑で、量産体制の整備が求められる
4. 接着剤接着と加硫接着の比較まとめ
項目 | 接着剤接着 | 加硫接着 |
---|---|---|
接着方法 | 接着剤を塗布して接着 | 生ゴム材を使い加硫工程で一体化 |
接着強度 | 低〜中 | 高 |
密閉性・止水性 | 低い(剥がれやすく漏れやすい) | 非常に高い |
柔軟性 | 接着面が硬くなりやすい | 一体化し柔軟性が均一 |
加工コスト | 低め | 高め |
使用用途 | 簡易接着や非重要部分、短期使用 | 高強度・密閉性が必要な部品 |
5. 接着強度と密閉性が重要な用途には加硫接着を
例えば、自動車のシール部品や防水性が求められる工業用ガスケット、医療用ゴム部品などは、接着部分の剥離や漏れが重大な問題になります。こうした用途では加硫接着が採用されることが多く、製品の品質と信頼性を支えています。
一方、日常的な補修や短期間使用の製品では、接着剤接着がコスト面で有利であり選択されます。
6. まとめ
ゴムの接着加工では、目的や使用環境に応じて「接着剤接着」と「加硫接着」を使い分けることが重要です。接着剤接着は簡便でコストが低い反面、接着強度や密閉性に限界があります。対して加硫接着は専用金型と設備が必要ですが、強固な接着強度と優れた止水・密閉性を実現し、耐久性の高いゴム製品作りに欠かせません。
製品の用途や求められる性能を正確に把握し、最適な接着加工方法を選定することで、製品品質の向上とトラブル低減に繋げることができます。