EPDMとCRの違いと使い分け|屋外パッキンで迷ったら
2025.10.16

ゴムパッキンを選定するとき、「EPDMとCRのどちらがいいのか?」という質問をよくいただきます。
どちらも屋外環境での耐候性が高く、汎用性のあるゴムですが、実際には使用環境・接触物質・コスト・加工性によって最適な選択が変わってきます。
この記事では、EPDMとCRの特徴・性能の違い・使い分けの実例をわかりやすくまとめます。
■ EPDM(エチレンプロピレンゴム)とは
EPDMは、エチレンとプロピレンを主成分とする非極性の合成ゴムです。第三成分としてジエンを加えることで、加硫が可能な構造を持っています。
一般的には「エチレンプロピレンジエンモノマー」と呼ばれ、略してEPDM(イーピーディーエム)と表記されます。
主な特徴
- 耐候性・耐オゾン性に非常に優れる
紫外線や雨風、オゾンなどによる劣化がほとんどなく、10年以上の屋外使用にも耐えるとされます。 - 耐熱性が高く、120〜150℃程度まで使用可能
屋根やエンジンルームなど高温環境でも安定しています。 - 耐水性・耐アルコール性が良好
雨水、冷却水、アルコール系薬剤にも強いです。 - 電気絶縁性が高い
絶縁部材や電気パッキン用途にも適しています。 - 非極性のため、油や溶剤には弱い
鉱物油や燃料が付着する環境では膨潤・劣化が起きやすくなります。
よく使われる用途
- 建築用防水パッキン(サッシ・屋根・外壁ジョイント)
- 自動車のドア・トランクシール
- 電力・通信機器の絶縁部品
- 防音材(EPDMスポンジ)
- 住宅設備用の防水・緩衝部品 など
EPDMは総じて「屋外環境に最も強い汎用ゴム」と言えます。
■ CR(クロロプレンゴム)とは
CRは、「クロロプレンモノマー」を原料とする極性のある合成ゴムで、
商品名「ネオプレン(Neoprene)」でも知られています。
EPDMに比べてやや古い素材ですが、バランスの良い総合性能が評価され、今も多くの産業で使われています。
主な特徴
- 耐候性・耐オゾン性も良好
EPDMには及ばないものの、屋外用途でも十分使用可能です。 - 耐油性・耐薬品性がある
鉱物油・潤滑油・グリースなどに触れる環境でも膨潤しにくいです。 - 難燃性に優れる
自己消火性があり、電気・輸送機器向けの防炎部材に採用されています。 - 機械的強度・反発弾性が高い
摩耗しにくく、クッションや防振材にも最適。 - 接着性が良い
他材料(布・金属)とのラミネートや接着にも適しています。
よく使われる用途
- 防振ゴム、パッキン、ガスケット
- 電気製品やOA機器の緩衝材
- 難燃仕様のゴム・スポンジ材
- 接着剤(ネオプレン系)
- ダイビングスーツなどのスポンジ素材
CRは、「油・薬品・火気を含む環境で安定して使える汎用ゴム」といえます。
■ EPDMとCRの違い(性能比較表)
特性項目 | EPDM | CR |
---|---|---|
主成分 | エチレン+プロピレン+ジエン | クロロプレン |
構造の極性 | 非極性 | 極性あり |
耐候性 | ◎ 非常に強い | ○ 良好 |
耐熱性 | ○ 120〜150℃ | ○ 100〜120℃ |
耐油性 | × 弱い | ◎ 強い |
耐薬品性 | ○ 酸・アルカリに強い | ○ 油系薬品に強い |
難燃性 | △ 一般的 | ◎ 自己消火性あり |
機械的強度 | ○ 普通 | ◎ 高い |
コスト | 安価〜中程度 | やや高価 |
このように、両者の大きな違いは「極性」と「耐油性・難燃性」にあります。
EPDMは非極性で油に弱く、CRは極性があるため油や薬品に強い、という点が使い分けの基本です。
■ 屋外パッキンでの使い分け方
屋外で使用するパッキン材を選ぶ場合、まず考えるべきは以下の3点です。
- 日光や雨風にどれだけ晒されるか(耐候性)
- 油・潤滑剤・薬品に触れる可能性があるか(耐油性)
- 火気や高温の環境にあるか(耐熱性・難燃性)
これらを踏まえた代表的な使い分け例を紹介します。
▼ EPDMが向いているケース
- 建築物の外壁ジョイントや屋上防水部など、直射日光や雨風に晒される場所
- 自動車のウェザーストリップやサンルーフシールなど、紫外線劣化を避けたい部位
- 水まわり設備(給湯器、屋外カバーなど)の防水・緩衝用途
→ 「屋外・非油環境・長期耐候」を満たす場合はEPDMが最適。
▼ CRが向いているケース
- 機械室・屋内配管まわりなどで潤滑油・グリースが飛散する環境
- 電気製品・車両部品などで難燃性が求められる場合
- 振動や衝撃を吸収する防振・防音パーツ
→ 「油・熱・摩耗が関係する環境」ではCRを選定。
■ EPDMスポンジ・CRスポンジの比較
近年では、両素材を発泡させたスポンジタイプも多く使用されています。
クッション性・シール性・軽量性を重視する現場ではスポンジ材の採用が一般的です。
特徴 | EPDMスポンジ | CRスポンジ |
---|---|---|
主な用途 | 建材・屋外パッキン | 電気機器・防振材 |
発泡構造 | 独立気泡または半連続気泡 | 独立気泡が多い |
圧縮永久歪 | 小さい(へたりにくい) | 中程度 |
表面仕上げ | 均一で滑らか | やや粘着感あり |
価格帯 | 比較的安価 | やや高価 |
EPDMスポンジは、屋外のサッシやエアコンカバーなどで多く採用されています。一方、CRスポンジは制振・防炎が重視される分野で採用されることが多く、いずれも特性に応じた使い分けが重要です。
■ 迷ったときの選定アドバイス
屋外用パッキンやスポンジ材を選定する際には、次のように整理すると判断しやすくなります。
- 紫外線・オゾン・雨風に強い素材 → EPDM
- 油・薬品・熱に強い素材 → CR
- 長期耐候で低コストを重視 → EPDM
- 防炎・防振など機械的要素を重視 → CR
また、EPDMとCRの中間的な性能を持つ「EPDM+CRブレンド材」や、「EPDMスポンジにCRスキンを形成した複合材」も市販されています。
現場の要求仕様(温度・環境・耐久年数)に応じて、最適なタイプを選ぶことが大切です。
■ まとめ|屋外パッキンで迷ったらEPDMが基本
EPDMとCRはどちらも汎用的で使いやすいゴム素材ですが、屋外用途ではEPDMが基本選定となります。
理由は、紫外線・オゾンによる劣化に最も強く、長期間安定したシール性を維持できるからです。
一方、油や熱・薬品・防炎が関係する場合はCRが有利。
使用環境をしっかり把握し、必要な性能に応じて選ぶことで、トラブルを防ぎ長期安定を実現できます。
「ゴムスポンジ調達ナビ」では、EPDM・CRをはじめ、NBR・シリコーン・ウレタンなど、
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