ウレタンゴム(ポリウレタンゴム)とは?特長・物性・用途を徹底解説
2025.06.04

はじめに
ウレタンゴムは、その高い耐摩耗性や耐油性、優れた弾性と強靭さで工業分野を中心に幅広く活用されている合成ゴムの一種です。正式にはポリウレタンゴムと呼ばれ、ウレタン樹脂の柔軟性とゴムの弾性を併せ持つ素材として注目されています。
この記事では、ウレタンゴムの材質の特長・長所・短所から、物性・耐性、歴史的な開発経緯、さらに具体的な使用例や推奨される用途について詳しく解説します。ゴム材料の選定や工業用途での採用を検討している方にとって、有益な情報をまとめました。
ウレタンゴム(ポリウレタンゴム)とは?
ウレタンゴムは、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物の反応により得られるポリウレタン系のエラストマーです。化学的にはポリウレタン樹脂の一種ですが、軟らかく弾性を持たせることで「ゴム」としての特性を持たせています。
主な特徴は、ゴム特有の伸縮性と、樹脂特有の耐摩耗性・耐油性・耐候性を両立している点です。これにより、自動車や機械部品、工業用部品の素材として非常に重宝されています。
ウレタンゴムの特長と長所
- 高い耐摩耗性
ゴム素材の中でも特に耐摩耗性に優れ、摩擦による劣化が少ないため、ベルトやホイール、シール材など長時間の使用に耐えられます。 - 優れた引張強度と伸び
引張強度は天然ゴムや合成ゴムよりも高く、耐久性に優れています。伸びも良好で、柔軟性が保たれています。 - 耐油性・耐溶剤性
油脂や多くの溶剤に対する耐性が強いため、機械油や化学薬品の環境下でも劣化しにくいです。 - 耐候性・耐オゾン性
紫外線やオゾンによる劣化が比較的少なく、屋外使用にも適しています。 - 優れた弾性回復性
圧縮永久歪みが小さく、形状保持能力が高いので、シール材や衝撃吸収材として適しています。
ウレタンゴムの短所・注意点
- 耐熱性の限界
一般的に使用温度範囲は−40℃〜+80〜90℃程度で、高温環境下での耐久性は天然ゴムやシリコーンゴムに劣ります。 - 加水分解に弱い
湿度の高い環境や水に長時間さらされると加水分解を起こし、性能低下することがあります。 - 製造コストが高め
天然ゴムや一般的な合成ゴムと比べて原材料や加工コストが高い傾向があります。
ウレタンゴムの物性・特性
特性 | 数値例 |
---|---|
引張強度 | 約20〜40MPa |
伸び(破断伸び) | 300〜600% |
硬度(ショアA) | 50〜95(幅広く調整可能) |
圧縮永久歪み | 5〜15%(良好な復元性) |
使用温度範囲 | -40℃〜+90℃ |
比重 | 約1.1〜1.2 |
ウレタンゴムの歴史的な開発経緯
ウレタンゴムは、1930年代にポリウレタン樹脂が開発されたのち、1950年代から1960年代にかけてエラストマー材料としての研究が進められました。特に耐摩耗性や耐油性が求められる産業用途での需要が高まり、現在では自動車部品、工業用シール材、ホース、ベルト、衝撃吸収材など多岐にわたる分野で使われています。
ウレタンゴムの主な用途と推奨使用箇所
- 工業用ホース・ベルト
耐摩耗性・耐油性が重要な搬送用ベルトやホースの材料として優れています。 - シール材・パッキン
高い弾性回復性を活かし、油圧機器や燃料系統のシールに使用されます。 - 衝撃吸収・防振材
耐摩耗性と弾性により、衝撃吸収材や防振ゴムとして重宝されています。 - ローラー・車輪
高い耐摩耗性と負荷耐性から工場の搬送ローラーやキャスター車輪にも使われます。 - 靴底材
耐久性と柔軟性を併せ持つため、高性能の靴底材としても利用されます。
通称名・代表的製品名
- ポリウレタンエラストマー
- PUゴム
- 各メーカー独自のブランド名例
- 「テクスレーン」(TEXLENE, 東レ)
- 「ポリウレタンゴム」(一般名称)
- 「ウレタンエラストマー」(工業分野での呼称)
- 「ブルコラン」金属・プラスチックと比較して平均10倍の耐摩耗性、耐荷重性は天然ゴムの5~10倍の高性能ウレタンゴム
まとめ
ウレタンゴムは、その卓越した耐摩耗性、耐油性、弾性回復性により、産業機械部品から防振材、ホース、ベルト、シール材まで多様な用途に適した合成ゴムです。特に摩耗が激しい環境や油にさらされる場所での使用が推奨されます。
一方で、耐熱性や耐水性には限界があるため、使用環境をよく考慮した上での材料選定が重要です。最新の材料開発や技術進歩により性能がさらに向上しているため、用途に応じて最適なグレードを選択することが望ましいでしょう。