フッ素ゴム(FKM)の耐薬品性を徹底比較|NBR・EPDMとの違いと最適な用途選び
2025.09.17

ゴム製品を選定する際に大きなポイントとなるのが「耐薬品性」です。シール材やパッキン、ホース、ガスケットといった部品は、使用環境により薬品・燃料・油・冷却水などにさらされることが多く、選ぶ素材を間違えると劣化や破損による重大トラブルにつながります。
その中で代表的な素材としてよく比較されるのが、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、EPDMの3種類です。本記事では、それぞれの耐薬品性や特徴を徹底比較し、用途に応じた最適な選び方をご紹介します。
1. フッ素ゴム(FKM)の特長と耐薬品性
フッ素ゴム(FKM)は、炭素とフッ素の強固な結合により、ゴム材料の中でもトップクラスの耐薬品性と耐熱性を誇ります。
- 耐熱性:-40℃〜200℃以上の高温環境で使用可能
- 耐薬品性:石油系燃料、鉱物油、有機酸、溶剤などに強い
- 耐候性:紫外線やオゾンによる劣化が少なく、長期使用に適している
特に自動車のエンジン回りや化学プラントのシール部品、航空宇宙分野など、過酷な条件下で安定した性能を発揮する点が最大の魅力です。ただし、アセトンや酢酸、アミン類など一部の極性溶剤には弱いため、使用環境の確認は必須となります。
2. ニトリルゴム(NBR)の特長と耐薬品性
ニトリルゴム(NBR)は、コストパフォーマンスに優れたゴム素材として最も広く使用されています。
- 耐油性:ガソリン、軽油、鉱物油、グリースに強い
- 温度範囲:-30℃〜120℃程度
- コスト:汎用性が高く、低コストで供給可能
自動車や機械の燃料系統、油圧機器のシール材などで活用されています。ただし、NBRは紫外線やオゾンに弱く、屋外用途には不向きです。また高温下での耐久性はFKMに劣るため、厳しい環境下では寿命が短くなる傾向があります。
3. EPDMの特長と耐薬品性
EPDMは、エチレン・プロピレン・ジエンゴムの略称で、水系や耐候用途に優れたゴム素材です。
- 耐薬品性:熱水、蒸気、アルカリ、冷却水に強い
- 耐候性:オゾン、紫外線、雨風に強く、屋外使用に最適
- 使用例:自動車のラジエーター、ブレーキシステム、建築用シーリング材
石油系燃料や鉱物油には弱いため、燃料や潤滑油を扱う用途には使用できませんが、耐水性・耐候性が求められる分野では欠かせない存在です。特に屋外環境や水回りのシール材としては、NBRやFKMよりも適しているケースがあります。
4. 代表的な使用シーンでの比較
ここからは、実際の使用シーンごとに3種類の素材を比較してみましょう。
① エンジン周辺・高温機器
- FKM:200℃超の高温環境でも安定、燃料やオイルにも強いため最適
- NBR:静的シールなら使用可能だが高温では寿命が短い
- EPDM:油に弱いため不適
② 燃料系統(ガソリン・軽油・バイオ燃料)
- FKM:ガソリンやアルコール混合燃料にも対応できる万能素材
- NBR:従来型ガソリンや軽油なら使用可能、コスト面で有利
- EPDM:燃料には使用不可
③ 冷却系・ブレーキ系
- EPDM:冷却水やブレーキ液に強く、唯一信頼できる素材
- NBR:冷却用途では劣化しやすい
- FKM:水系には適さない場合が多い
④ 屋外シール材
- EPDM:耐候性・耐紫外線性が抜群で最適
- FKM:耐候性はあるがコストが高いため用途は限定的
- NBR:紫外線に弱く、屋外には不向き
5. コストと性能のバランス
素材選定の際には、単に性能だけでなく「コスト」と「用途の適合性」を考えることが重要です。
- フッ素ゴム(FKM)は性能は抜群ですが高コスト。高温・耐薬品環境では必須。
- ニトリルゴム(NBR)はコストを抑えて、耐油用途の汎用用途に最適。
- EPDMは水系・屋外環境において経済的で実用的な選択肢。
このように「性能」と「コスト」のバランスを見極めることで、無駄なコストをかけずに長寿命の部品設計が可能になります。
6. 当社がご提案できること
当社では、フッ素ゴム、ニトリルゴム、EPDMをはじめとする各種素材を取り扱い、用途に応じた最適な材料選定をサポートしています。
- 使用環境に応じた素材提案(温度・流体・圧力条件をヒアリング)
- 加工方法(押出、裁断、両面テープ貼り、接着など)のご提案
- 試作品サンプル提供と性能評価サポート
- 量産時のコスト最適化・納期対応
「とりあえずどの素材が良いのか知りたい」という段階でもお気軽にご相談ください。現場に合わせた実用的なご提案を行います。
7. まとめ
- フッ素ゴム(FKM)は高温・耐薬品用途に最適で、特にエンジンや化学装置で活躍
- ニトリルゴム(NBR)は油・燃料に強く、汎用性とコストメリットが大きい
- EPDMは耐候性・耐水性に優れ、屋外や冷却水・ブレーキ用途に最適
それぞれの素材には得意分野と不得意分野があるため、「どの薬品・流体に接触するのか」「どの温度域で使用するのか」「屋外か室内か」を明確にすることが素材選定のポイントです。
用途に合わせて最適なゴム素材を選ぶことで、製品の信頼性とコストパフォーマンスを両立できます。素材選定でお困りの際は、ぜひ当社にお問い合わせください。
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